私は入院中に、同じ病気の女性と仲良くなりました。私と先生のやり取りを聞いていた女性が、「あなたも〇〇って病気なの?私もよ」と声をかけてくれたのです。それかたお互いの治療の話や家族のことなど話すようになりました。
病院の廊下を歩いていると、談話室からその彼女が私を見つけ、手で「おいでおいで」とするのです。近づいてみると、見知らぬ男性が隣りに座っていました。彼女は少し真剣な顔をして言いました。「あなたにも関係あると思うよ。ちょっとこの人の話、聞いてごらんなさい。」
その男性は特に名乗ることもなく、ぜひ聞いてもらいたい話があるんだと言いました。そしてそれを聞いてどう感じるのか?自分がこれから妻に伝えようとすることは本当に正しいのかということでした。
それは「死後離婚」を妻に勧める話だったのです。
第1話 → 死後離婚 相続無いし親の面倒はもういいよ 【今度妻に伝えよう①】
第2話 → 死後離婚とは?法律的な事やその効果を確認 【今度妻に伝えよう②】
そしてこれからが第3話となります。
死後離婚 名字はどうなるのか?
【ある男性】
私が亡くなった後、妻が「死後離婚」をした場合、心配なことがいくつかあります。
まずは、名字についてです。
「死後離婚」の手続きをすれば、妻は息子といっしょに自分の実家へ行くでしょう。妻の実家も両親2人だけで住むにはちょっと広すぎますからね。キッチンやお風呂も数年前にリフォームしたばかりで、快適に過ごせるはずです。
そんな新たな生活を送る妻と息子、名字はなんて名乗るのでしょうか?旧姓で名乗ってもいいのですが、きっと私の名字をそのまま使うでしょう。
「姻族関係終了届」を出しても、いまの名字のままで大丈夫なのでしょうか?
それ答えとしては、妻と息子は今の名字のままになります。
「姻族関係終了届」を出しても、戸籍に変更はありません。戸籍ではいまの名字のままなので、当然ながら、そのまま続けて名字を使い続けるのです。ですから妻と息子は後ろめたさを感じることなく、いまと変わらず名乗ることができます。
ちなみに旧姓に戻ることもできます。「復氏届」というものを出せば旧姓を名乗ることができます。これは私の気持ちとしては、どちらでも問題ありません。残ったものが生活しやすく過ごしやすい環境になるように、名字を選んでくれればいいワケですから。
死後離婚についてはそういったことも、今のうちに妻に伝えておきたかったことなんですよね。
「死後離婚」と「離婚」の名字の違いとは
「妻が実家に息子を連れて戻る」、こういった状況を周囲ではどのように見えるのでしょうか?
正直な話、妻が実家に戻ったからと言って、それはもう珍しいことではないですよね。日本では結局3組に1組は離婚しているというのが現実。テレビのワイドショーやニュースでも、ひっきりなしに芸能人の別居や離婚が報道されてますからね。
妻の実家の周囲の人たちも、きっと温かい目で見守ってくれるでしょう。
ここで「死後離婚」と「離婚」の名字について、違いを理解しておきましょう。
離婚の場合、一般的には妻は旧姓に戻ります。しかし届出すれば結婚時の名字をそのまま名乗れます。
死後離婚の場合、妻は結婚したときのままの名字です。でも届出すれば旧姓に戻れます。
どちらも原則と応用があり、どちらの名字を名乗ることができます。このあたりについてはどちらも臨機応変に対応できるので、周囲から見てもどちらなのかはわからない状態でしょうね。
死後離婚 息子に知ってもらいたいこと
私が亡くなると、いちばん心配なのは息子のことです。子は年齢がいくつであろうとも、その親の死を受け入れることはできえるでしょう。しかし気持ちをちゃんと伝えられたかどうかはわかりません。
妻が「死後離婚」という判断をした場合、それは息子にも正しいことだったとわかってもらいたいんです。
息子からすれば、「お父さんは死後離婚なんて望んでなかったはずだよ」と思うかもしれません。そうやって妻と息子の間に亀裂が生じることがあるかもしれないのです。
私はいまハッキリと言えます。死後離婚は私が望んだことなんだと。死後離婚なんかで、妻と私の絆が揺るいだりすることはないと。妻と息子のこれからの未来を願うのが父親としての役目であり、それが一番望むことだと。
いまはまだ小学生の息子ですが、そういった誤解が生まれないように、ちゃんと今のうちから「死後離婚」について妻に伝えておこうと思ったんです。
まとめ
その男性の「死後離婚」についてのお話、ついつい聞き入ってしまいました。
最初、「死後離婚」という言葉をその男性から聞いた時、夫婦どちらかの身勝手な意見を聞かされるのだろうと、うんざりとした気持ちになったのは確かです。
でもその男性の話を聞いているうちに、死後離婚についての考えが変わりました。私だったら、この人のように死後離婚の話ができるのだろうかと。いまはまだそのような気持ちにはなれませんが、でも、きっと同じような状況になれば自分自身の死後離婚についても、話し合いをせねばならないでしょう。
できれば前向きな死後離婚について、話しておきたい…そう感じました。

